「空気を読む」文化の強い日本で、職場でも、友達や恋人と一緒にいるときも、さっきのはどういう意味?とモヤモヤするあなたに、3つの解消法を紹介します。


「じゃあ、もう来なくていいよ!どうでもいいことばかり話して、何が言いたいんだ?」あの日、会社のみんなの前で言われた、あのキツイ一言が忘れられません。

「お金、ちゃんと振り込んだ?」ここ2週間はずっと体調が悪いのに、彼が気にするのは買うのを頼んだプラモデルのことだけ。あなたはスマホを握りしめながら思うのです。この恋はもう終わっているのでは?

「へぇ」考えていることを一気にまくしたてた後、親友に返されたのはその一言だけ。あなたは自分に問いかけます。前に、あなたがこの親友の彼氏と2人で、彼女へのプレゼントを買いに行ったことにまだやきもちを焼かれているのだろうか。それとも、カバンを借りて返すのが遅れたことを根に持たれているからだろうか。

気になる人に既読無視をされたこと、来るべき人が決まった時間に現れなかったこと、フェイスブック上で彼が「いいね」を押したというだけのこと、隣にいるときに彼が1センチ離れたこと、寝る前の電話を先に切られたこと、あなたは何にでもたくさんの筋書きを思い描き、いろんなことに考えを巡らせます。たくさん考えれば、答えがハッキリするというのは思い込みで、考えれば考えるほどに混乱し、面倒になっていくものだとも、あなたは気がついています。思い通りにいかないことが起きたり、自らを脅かす小さなできごとが起きるたびに考えすぎスイッチが押され、「自動的思考」を始めます。

友達から「考えすぎないほうがいい」と言われても、それができるのなら、そもそもそんな考えには陥っていませんよね。心理学者のスーザン・ノーレン・ホークセマ氏は考えすぎのことを「自分中心の反芻(はんすう)思考」と名付けています。考えれば考えるほど、仕事に集中できなくなるうえ、考え続ければものごとの本質が見つかるというのは思い込みで、実際増えていくのは悲観的でネガティブな考えだけです。本当に楽しく生きている人は、楽しく生きられない時に、どうしたら自分の注意を分散させられるのかを知っています。そんな人たちが気にしているのは、誰が何を言ったとか、ダイエットの進み具合とか、「いいね」が増えたとかではなく、「今、自分がしていること」なのです。

「脳みそをほじくりだしちゃいたい。時として頭が良すぎるのも困りものよ!」友人のLuluが私にそう言ってくるたび、彼女は本当にナイフやスプーンを手に取って頭をほじくり始めるのではと、心配になります。「考えすぎ症候群」になってしまった場合、少しでも「症状を和らげる」方法はないでしょうか。長年、ハピネス心理学を研究しているソニア・リュボニアスキー氏が、著書『幸せがずっと続く12の行動習慣』の中で、考えすぎをやめる3つの方法をあげています。

1. ストップ!あとでまた考える!

自分に「ここまででストップ」と言い聞かせて!取るに足らないことのようですが、実際にやってみると、想像よりもむずかしくありません。「心象(例えば、頭の中で赤いバッテンをイメージしたりする)」や、「儀式(頭を振る、両手を組むなど)」をつうじて考えすぎをやめるのです。もし、これらの方法でもストップがきかなければ、「今はまずやるべきことをやろう。『思考タイム』で、また改めて考える」というように、自分に「呪文」を唱えるのもいいでしょう。寝る前の10分間や、交通機関で移動する6駅の時間を使って、しっかりと考えるのです。考えすぎをスッパリと禁止するわけではないため、とても簡単です。「どうせあとでイヤというほど考えられる」と思っていると、気持ちも楽になります。しかも、実際に「思考タイム」になったとき、それまでにあった多くの葛藤は、意外とどうでもよくなっています。

2. 書いて、自分に安心感を与える!

あなたが考えていることを全て「紙に書く(またはパソコンやスマホに打ち込む)」ようにすると、頭の中の「考えすぎ」が、書くことを通して少なくなっていることに気づくはずです。私たちは考えているときに、同じ内容を繰り返し思考していますが、同じ文を書いたり打ったりすることはほぼありません。私の経験では、書いた後に頭の中に残っているのはだいたい元々の4割だけです。どうでもいいような内容を延々と書いてしまうタイプの方も大丈夫です。書くことによる効果のなかに、「自分に安心感を与える」というものもあり、心理的閉合(psychological closure)を増加させられます。

書くことはたくさんの心理療法で用いられており、書くことで、心の未完成で不完全な部分がゆっくりと浮かびあがってきます。以下のようなことを書くと良いでしょう。(1)なぜ心配してしまうのか?(2)あなたが望む結果とは?(3)最も望ましくない結果とは?(4)他に可能性はあるか?どうなる可能性が高そうか?

3. 一歩ひいて、「今」から離れる!

これは私が一番よく使っている方法です。手元にペンがなかったり、あとで考えることができないとき、「今気になっていることは、10年後も重要なこと?それでも私はまだ気にする?」と、自分に問うのです。中国映画『小時代』(Tiny Times)の名セリフについて考えてみるのもいいでしょう。

私たちは広大無辺な宇宙に生きている。満天に漂う宇宙塵や星屑。私たちはそれらより、もっとちっぽけな存在。生活がいつクルリと方向を変え、墨のように漆黒の暗闇に陥るのかは、わからない。失望に深淵まで引きずり込まれ、病気に墓まで連れて行かれ、挫折に完膚なきまでに踏みにじられ、嘲笑され、嫌味を言われ、嫌われ、見捨てられるかもしれない。だというのに、私たちはいつも心に、希望とトキメキをあきらめられない気持ちを持っている。それでも大きな絶望のなかで、ちっぽけに努力する。この種のあきらめたくない気持ちは、無辺の暗闇の小さな星に変わる。みんな、小さな星なんだ。

これほど大きな宇宙の銀河の中で、自分がある惑星にいる数億人のうちの1人だと想像してみたら、裏切り、嘘、未練、音信不通、既読無視、言えなかった「ごめん」や言い忘れた「さよなら」、全部がそこまで苦しくむずかしいことではないと思えてきます。

もし何かあって、どんな方法を使っても効果がなく、いまだそれを重要なことだと思うなら、あなたに必要なのは繰り返し考えることではなく、他の人に話してみて自分の気持ちを吐き出したり、解決方法を話し合うことでしょう。もちろん、状態がさらに複雑な場合や、友達もあなたのせいで疲れきってしまいそうな場合は、カウンセラーに助けを求めるというのも一つの方法です。

ひとりで「考えすぎ」と戦わないでください。手を伸ばせば、あなたは人生の道中で決してひとりではなかったのだと気づくはずです。


注釈

1. 本の中には他の方法も記されていましたが、この3つが最も特筆すべきだと思ったので、このようにまとめました。

2. 写真はLily Galleryという写真家によるもので、私はこの作風が好きです。