相手の言動が気になり、スマホを見ずにはいられない衝動にかられて、相手を怒らせた経験がありますか?実は、やきもちをやくのは、失いたくない気持ちが働いているからなのです。


「『本当に疲れたんだ。疑われるのももう嫌だ』彼氏が離れていく前の捨て台詞。音を立てながらドアを閉めて、出て行ったのは4日前。頭に来たし悲しかったから、リビングのクッションを抱きしめてずっと泣いてた。目が覚めたらクッションは涙で濡れてて、クッションカバーを洗ってる時にやっと気づいたの。ここ数年、私がずっと気にしてたのは、彼が誰と出かけたか、どこに行ったのかじゃなくて、彼が私のもとを離れていくのが怖かったんだって」。Graceは目に涙を溜めながら、私に言いました。

Graceとは長年の付き合いですが、彼女は彼氏が電話に出なかっただけで「他の女と話しているのでは?」と疑う女性でした。

あなたはやきもち焼き?

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恋愛関係の嫉妬(Romantic Jealousy)の研究に長年とりくんでいるカウンセラーのアヤーラ・パインズ氏が著書『ロマンチック・ジェラシー―嫉妬について私たちの知らないこと』で、自分がやきもち焼きなのかを簡単にチェックできる方法を挙げています。あなたは、次のような状況でやきもちを焼きますか?

 

1. パーティーに参加した時、彼がほとんどの間、他の人と話したり、踊ったりしている

2. パーティーや集まりに参加した時、彼が長い間どこかに消えた

3. パーティーや集まりに参加した時、彼が急にどこに行ったかわからなくなった

4. 彼に電話をかけた時、いつも通話中だ

 

このようなことがあると、気分を害したり、頭に来たりしてしまいやすいですが、一般的に多いのは1と2のシチュエーションでやきもちを焼く人で、3と4の時ですらやきもちを焼いてしまう場合、あなたは「過度なやきもち焼き」かもしれません。もちろん、相手に浮気されたことがあったり、「前科」がある場合は除いてです。気をつけなければならないのは、「過度なやきもち焼き」は病的なものだというわけではなく、ただ「普通の人より敏感でやきもち焼き」なだけです。そうは言ってもやはり、こういったやきもちは、2人の関係に大きな影響を及ぼすものです。

嫉妬は失うことへの恐れ

「何もないってば!通話履歴を全部見せないと気が済まないのか?」

「もう6年前の写真だろ。何年も連絡を取ってないし、俺にどうしろって言うんだ」

恋人と異性(もしくは元恋人)の関係や交流が、最も喧嘩が起こりやすく、触れてはいけない問題だということは、多くの研究で明らかになっています(注1・注2)。どうせ毎回この話をしたらケンカになるとわかっているのなら、自ら墓穴を掘らなくてもいいはずです。

実際、やきもちの裏側には、気になる人や大切な人が存在し、その嫉妬心の裏側には、失うことへの恐れが隠されているのです。アヤーラ・パインズ氏は心理カウンセリングの観点を引用し、やきもちの傾向は人によって違っていると指摘します。

 

1. 幼少期に喪失感を感じたり、不当な扱いを受けた経験がある

2. 浮気された経験がある

3. 人とのコミュニケーションの際、認められたり肯定されることが少ない

 

これらは、自己の捉え方や、恋愛関係の自信に影響している可能性があります。こういった経験が多い人ほど、恋愛関係で不安を感じることが多く、他の人に比べてやきもちを焼きやすいのです。

重度のやきもちを克服する2つの方法

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では、あなたやあなたの恋人が重度のやきもち焼きだった場合、一体どうすればいいのでしょうか?

アヤーラ・パインズ氏の研究では、やきもちを焼く時に自分の気持ちを恋人に話す人が最多数の34%、自分が傷ついたことを伝える人が25%、嫉妬の感情を無視してやり過ごす人も22%いることが分かっています。ところが、最善の対処方法は「その状況の中での自分のポジションをしっかり考え、何を失うのを恐れているか理性的に評価する」ことなのです。

(1)原因をさぐる自分探し

アヤーラ・パインズ氏が本の中で挙げた自分探しの方法は以下のようなものです。

1.「表面」にある原因をさぐる:あなたは、なぜ嫉妬と不安にかられているのでしょうか。彼がひとりで出かけて、あなたを連れて行かなかったから?他の人と出かけるときや写真を撮るとき、あなたを誘わなかったから?

2.「核心」である原因をさぐる:それらの表面的な原因の裏側に隠されているのは、何を失うことへの恐れなのでしょうか。彼を失うこと?捨てられること?2人の関係が危うくなると思っているから?それとも、自尊心が傷ついたから?

3.「経験」との関連性をさぐる:なぜあの時、暴走してしまったのでしょうか。彼にされたことが、あなたの幼い頃や元彼との経験と関係していないか?初めに好意を持ってくれた(もしくはあなたが彼を好きになった)理由と関係していないか?

「私だってわからずやの自分は嫌だし、探偵のように何でも疑ったりしたくない。でも、あらぬ方向に考える自分を、どうしてもコントロールできないの。もしかしたら、1人目の彼氏に裏切られた経験が、心に不安を植え付けていて、その後の彼氏は全員、まるで借金の返済みたいに、嫉妬のたびに釈明や慰めを繰り返してたのかも。彼らが降参するその日まで」彼女は、お手上げな様子で、ひと口残っていたイチゴパンケーキを食べ終え、口元のクリームを軽くぬぐったのでした。

そういった質問を自分に投げかけてみて、もし嫉妬の裏側に失うことへの恐れがあったとしたら、何があなたを「失うことをそんなにも恐れさせる」のでしょうか。

(2)傷つくことを回避する3つのステップ

ただ恐怖の正体を知っただけでは、次に同じようなことが起きたときに、それほど大きな効果は出ないため、アヤーラ・パインズ氏は「具体的な」対応ステップを補足しています。

 

1.恋人の気持ちを想像する:「あの女友達とずいぶん会っていなかったから、きっとたくさん話したかったのだろう。私を連れて行くと、話しにくかったのかもしれない」

2.自分の気持ちを整理する:「でも、彼が他の人と一緒にいる時間が少しでも長くなると、すぐに淋しさを感じる」「終わったら電話をくれると言ったのに電話の時間が遅れたら、不安に思う」

3.自分の要求をはっきりと示す:「私も一緒に連れて行ってくれたら、すごく嬉しい」「あなたが一人で集まりに出かけるとき、私のことを気にかけてくれたり、帰りが遅くなるのを電話で教えてくれれば、少し安心できる」

 

この過程においては、相手と順番に話し、充分に気持ちを伝えられる雰囲気をつくることに注意を払うべきです。例えば、何かバトン代わりの物を握りながら5分間話し、一方が話し終えたら握っていた物を渡すというようにします(物はスマホでもペットボトル等でも構いませんが、ガラス製のコップはやめましょう。というのは……言わなくてもおわかりでしょう)。相手の番になったら、5分間なにも口を挟まず、真剣に話を聴きます。

嫉妬にあるのはデメリットだけではない

心理学者のポコニャン氏が、恋愛関係において、有害無益なことを繰り返すほど馬鹿な人はいないと言っていました。もし、あなたも嫉妬心に困っているのなら、毎回やきもちを焼くときに、何らかの「メリット」を得ているのでは、と自分に問うてみてもいいかもしれません。

「たぶん、私の嫉妬心は、私の恐れを映し出していただけ。家庭ではずっとぞんざいに扱われるポジションだった。晩ご飯を食べるとき、母はいつも兄に先に食べさせたし、テストで1位だったときもご褒美はなかったし、1位なんか当たり前のことだとすら言われてた。親は結局、私の卒業式には一度も来てくれたことがなかった。そのうち、卒業式の日程すら教えなくなった。期待しなければ傷つくこともないからね。だから、私のことを私自身よりも守ってくれて、気にかけてくれて、お世話してくれるような誰かがいるんだって気づいたとき、実はすごく複雑だった。愛されるほどに、彼を失うのが怖くなって、そうしているうちに彼を責めることでしか、罪悪感を紛らわせなくなってしまったの……。それに、私が怒れば、彼は時間をもっと使って私のことを考えたり、慰めたり、ご機嫌をとってくれたりするじゃない?」嫉妬心には様々なわだかまりが絡み合っていたことを、彼女はようやく意識したようでした。

遠くの鐘が12回、寓話のように鳴る。霧が薄くかかった空気は、両手をこするほど寒い。赤レンガ造りの鐘塔の針を見上げ、ファーのついた手袋を外した彼女は、混乱から解き放たれたように見えた。鍾塔の横の雲の重なりから、夕日の温かな光がじんわりと染み出していた。


注1. Anderson, M., A. Kunkel, and M.R. Dennis, "Let's (Not) Talk About That": Bridging the Past Sexual Experiences Taboo to Build Healthy Romantic Relationships. Journal of Sex Research, 2011. 48(4): p. 381-391.

注2. Baxter, L.A. and W.W. Wilmot, Taboo Topics in Close Relationships. Journal of Social and Personal Relationships, 1985. 2(3): p. 253-269